てんてんと

へなちょこアラサー既婚女の世迷いごと

改めて感じる《熊猫堂》がアイドルたる所以

我が推し《熊猫堂》は中国の男性五人組アイドルグループです。

 かわいい

 

しかし全員ひげを生やしたぽっちゃり男性という、多くの人がアイドルと聞いて思い浮かべるような外見とはかけ離れています。

故にファンでない方々の中には「こんなのアイドルなんて言わないよ」と言う人もいらっしゃいます。

別にここで「うるせぇすっこんでろやっちまうぞ」と元気よく返答しても良いのですが、ここはお淑やかに「ではアイドルって何でしょう亅と考えてみたのです。

 

そこで読んだ本が西兼志さんの『アイドル/メディア論講義』でした。

 

目次

0 はじめに:なぜ〈アイドル〉か?
1 1980/〈アイドル〉のふたつのモデル
2 〈スタ-〉と〈タレント〉/ネオTV
3 映画の時間とテレビの時間/メディアの現象学
4 成長するアイドル/アイドルの現象学
5 教育するアイドル/メディア・ハビトゥス
6 コミュニケ-ション文化と〈アイドル〉/「リアルTV」化するメディア環境
7 〈キャラ〉と〈アイドル〉/拡張されたリアリティ
8 〈アイドル〉の歌う「卒業」/過去志向から未来志向へ
9 ライブ時代のアイドル/コミュニケ-ションコミュニティ
10 おわりに:それでもなお〈アイドル〉か!?
アイドル論/メディア論のためのブックガイド

 

この講義はこのように結ばれます。

ここまで見てきたように、〈アイドル〉とは、新たな状況に置かれ、その状況に前向きに臨む姿勢、「ハビトゥス」を実践し、伝達していく存在でした。

(中略)

〈アイドル〉を中心としたひとつの共同性=コミュニティ、あるいは、ひとつの文化がかたちづくられることになります。新しい状況、未来に臨んでの前向きな姿勢、未来志向性によって、〈アイドル〉は〈アイドル〉たりうるのであり、それによってこそ、〈アイドル〉は、わたしたちの生きるメディア社会のひとつの焦点なのです。

『アイドル/メディア論講義』205〜206頁より

ハビトゥス」とは社会学ピエール・ブルデューの提唱した概念で「新しい状況でどう振る舞うかを規定する、習慣として身体化された傾向性」ということです。これがメディアによって〈アイドル〉から見る者に伝えられるのです。

 

 

さて、このように〈アイドル〉が新しい状況や未来に臨む姿勢によって特徴づけられるものであるなら《熊猫堂》がアイドルでないなんて到底言えないのです。

 

従来のアイドル像からはかけ離れたルックスを持ちながら(全員最高に可愛いけどね)アイドルとして歌やダンスといったパフォーマンスに挑むこと自体「新しい状況に臨み、未来を開いていくふるまい」と言えるでしょう。

 

また《熊猫堂》はデビュー前の訓練生の時代からの時間をファンと共有してきました。

昔の映像を見返すと「まだちょっと垢抜けてないな(これはこれでかわいい)」とか「いま接触事故起きませんでした?(かわいいかよ)」とか「表情管理大丈夫そ?(でもかわいい)」などと思うこともありました。

そのような状況からアイドルとして学び、成長していく様子をファンは見てきました。

彼らがアイドルとして自らに磨きをかけていくのをファンが見守り応援していくというドラマ性は、他のアイドルグループとなんら変わらない点ではないでしょうか。

 

またこの講義においてアイドルの楽曲の歌詞を分析し、そこには未来志向的な「エール」「呼びかけ」「約束」といった、それを発することで相手に何らかの影響を及ぼす「発話媒介行為」があり、曲を聴く者との共同性が仮構されると論じている箇所があります。

ここで私が思い浮かべるのは《The ONE》という曲です。

もちろん《熊猫堂》の曲のなかで唯一日本語で歌っている曲なのでピンときやすいというのもあるかもしれませんが、それを差し引いても実に未来志向的でファンとの共同性を感じさせるような歌詞だと思えます。

僕ら引き合った出会わした運命だ 一体何処に向かってんのかは

誰だって知らない 正解だってきっとない だから心躍るんだ

歌う側と聴く側の出会った運命、出会ったが故に始まる冒険への興奮を投げかけています。

あるいは

ほら攫う勝利 祝杯は一緒に

と勝利の喜びを歌う側と聴く側が共にすること

今きみと僕が出会う世界 手を繋いだら 待ってなんていらんないよ

Ain't no stoppin' us We are the one We are the one  We are the one

乗り越えられる 僕らなら

 

どんな困難だって関係ない Ain't no stoppin' us We are the one

止まってる暇はない  Ain't no stoppin' us We are the one

どこまでも行けるさ  Ain't no stoppin' us We are the one

僕ら一緒なら

歌う側は聴く側へ一緒に困難を乗り越えて、未だ見ぬところへ行こうと呼びかけてきます。

そして歌う側と聴く側はお互い一緒に未来へ臨みたいという姿勢をもって連帯します。

このように歌う側《熊猫堂》を中心にしてファンである《飼育員》との共同性がかたちづくられます。これはアイドルの所業であると言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

とまぁどんな理屈こねようが、結局私が言いたいのはひとつだけです。

 

《熊猫堂》は最高のアイドルです!よろしくおねがいします!